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“超無謀”だった「A380」購入 スカイマークの命取りになった超大型機

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“超無謀”だった「A380」購入 スカイマークの命取りになった超大型機

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スカイマークが発注した「A380」の初号機。昨年4月に仏トゥールーズで初飛行を終えた約3カ月後、購入契約は解除された(エアバス提供) 【「第三極の誤算」スカイマーク破綻】(下)

 その飛行機は、今も仏南西部のトゥールーズで中ぶらりの状態にある。2011年にスカイマークが欧州エアバスと購入契約を結んだ世界最大の旅客機「A380」6機のうち、ほぼ完成していた初号機だ。一部にスカイマークのデザインが施され、初飛行も終えていたが、14年7月下旬に全6機が解約。「買い手が現れるのを待っている状況」(関係者)という。

 経営破綻したスカイマークの命取りになったのが、このA380の導入計画だった。6機の購入代金は総額1915億円。契約を結んだ11年は経営が絶好調だった時期だったとはいえ、年間売上高のほぼ倍に当たる巨額の投資だった。

 だが、業績は急速に悪化し、代金の支払いが滞る。エアバスからは購入契約解除の通告に加え、7億ドル(約830億円)の違約金を求められた。会社のイメージ悪化や顧客離れが加速し、経営は追い詰められていった。

 民事再生法の適用を申請した翌日の今月29日、就任後初の会見に臨んだ社長の有森正和は、報道陣から「A380の導入計画が破綻の理由になったのか」と問われた際、「それで結構だ」と認めざるを得なかった。

 A380の導入計画は「超ワンマン」で知られた前社長、西久保慎一が主導したものだった。スカイマーク関係者は「国際線参入は西久保氏にとって悲願だった」と説明する。

 当初は14年10月にA380の初号機を受け取り、同社初の国際線として14年末にも成田-ニューヨーク線に就航させる計画だった。型破りの手法で業容を拡大してきた西久保には、好業績の余勢を駆って「2強」の日本航空や全日本空輸に一気に肩を並べようとの思惑もあったようだ。だが、これだけの超大型機を使いこなせる航空会社は世界でもそう多くない。当初から日本の航空業界では冷めた反応が多かった。「話を聞いたときは『超無謀』だと思った」。大手航空会社の役員はこう振り返る。「国際線経験ゼロの会社がいきなり超大型機で長距離路線を展開しても、うまくいくわけがない」

 西久保の下で突き進んだ拡大路線の象徴といえるA380の導入計画。全6機がキャンセルとなり、会社の経営が破綻した今も、エアバスとの違約金問題は着地点を見いだせていない。

 社長の有森は「民事再生法の適用申請を違約金交渉(を有利に運ぶため)の道具にしようとは考えていない」とし、エアバスに対しては「理解を得ながら誠心誠意、交渉を進めたい」と神妙な姿勢をみせる。

 スカイマークの負債総額は約710億円だが、違約金はエアバスとの交渉が決着していないために含まれておらず、負債総額はさらに膨らむ可能性がある。

 違約金が大幅に減額されなければ、結果として負債総額に占めるエアバスの割合が大きくなり、今後の焦点となるスポンサー企業の選定や再生計画の策定にエアバスが大口債権者として強い影響力を持つことになる。スカイマークの再建は、エアバスがどう動くかに左右される。=敬称略(この連載は森田晶宏、田端素央が担当しました)

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