ニュースカテゴリ:企業情報通信
頂上決戦!「妖怪ウォッチvsポケモン」 任天堂復活の鍵握る2大ソフト
更新
妖怪ウォッチの人気キャラクター「ジバニャン」 1年で最もゲーム機やソフトの売り上げが伸びるクリスマスに向けた年末商戦が佳境を迎えている。今年の目玉はなんといっても小学生を中心に大ブームとなっている「妖怪ウォッチ」の新作と、王者「ポケットモンスター」のリメイク作品が同時期に発売されることだ。「販売本数200万本超は確実」といわれる両ソフトの直接対決が注目されるが、いずれも携帯型ゲーム機「ニンテンドー3DS」向けのため、任天堂復活の鍵も握っている。(藤原直樹)
妖怪ウォッチは福岡市のゲームソフト会社レベルファイブの制作で、新作「妖怪ウオッチ2真打(しんうち)」は12月13日の発売。7月に発売した「妖怪ウオッチ2元祖」「同本家」の改良版で、すでに大ヒットは確実とみられている。
昨年7月に発売した初代妖怪ウォッチは当初、ヒットと呼べるほどの販売本数にはならなかった。ところが、今年1月にテレビアニメが放送されると、小学生を中心に人気が高まり、玩具メーカーのバンダイが販売する主人公が用いる腕時計を模した玩具「DX妖怪ウォッチ」や、ゲームやアニメに登場する妖怪が描かれた「妖怪メダル」が爆発的にヒット。売り切れ店が続出した。
腕時計型玩具にメダルをはめこむと妖怪の声が流れるのが特徴で、このメダルは1月の発売から計1億枚以上を販売している。これに合わせてゲームソフトの売り上げも増加。販売本数は初代が100万本を突破し、7月発売の「2」は2作合わせて300万本近くに上っている。
妖怪ウォッチでは「クロスメディア」と呼ばれる手法が採用され、注目を集めた。レベルファイブと放送局、広告代理店、玩具メーカーが連携し、ゲームやアニメ、玩具などを相互に関連させながら新商品を投入する仕掛けで、消費者の購買意欲を刺激し続ける施策をとった。
この結果、子供のためにゲームや玩具を買い求める親で店頭に長蛇の列ができるなど、社会現象ともいえるほどの人気を生むことに成功した。
大手家電量販店のゲーム担当者は「年末商戦の本命は、ゲームに玩具などの販売を含めると妖怪ウォッチで決まりではないか」と太鼓判を押す。
一方のポケットモンスターのリメイク作「オメガルビー」「アルファサファイア」の2作品は11月21日に発売。2作合わせて発売初週に販売本数150万本を突破した。昨年10月に発売した前作の「X」「Y」は2作合わせて400万本を超える販売本数を記録しており、今作も同規模の販売が期待される。
ただ、今作が発売される前は専門家から「ポケモン人気の陰り」が指摘されていた。ポケモンも主なターゲットは小学生で、妖怪ウォッチが大ブームになるなか、保護者頼みの子供たちの購買力に限りがあるため、販売面では妖怪ウォッチに軍配が上がるとの見方だった。
実際、ショッピングセンターなどで行われるイベントでは、妖怪ウォッチの人気キャラクターが登場すると、どこも子供たちであふれるのに対し、これまで圧倒的な集客力を誇っていたポケモンのイベントでは空席が出るなどの事例も出ていた。
しかし、ふたを開けてみればポケモンも好調なスタートを切り、根強い人気を見せつけた。さらに、妖怪ウォッチがほぼ国内のみの展開であるのに対し、ポケモンは海外での人気も絶大で、海外の3DS販売牽引も期待できる強みがある。
まさに年末商戦の「東西の横綱」といえる両ソフト。ゲーム雑誌「ファミ通」を刊行するKADOKAWA・DWANGOの浜村弘一取締役は「いずれも人気は高く、懸念された市場の食い合いもほとんどない。両ソフトが牽引することで年末商戦のゲーム市場の拡大が見込める」と期待する。
さらに注目すべきは、両ソフトともニンテンドー3DS向けということだ。任天堂の岩田聡社長は10月30日のアナリスト向け経営方針説明会で「今年の年末商戦は200万本超を狙えるソフトが数本ある。これだけ短期間に集中するのは史上初ではないか」と胸を張った。
任天堂は平成26年3月期まで3年連続で営業赤字を計上。とくに昨年の年末商戦は予想を大幅に上回る不振で、今年1月に26年3月期の営業損益予想を1千億円の黒字から350億円の赤字へと下方修正を余儀なくされている。
一方で、26年9月中間連結決算は営業赤字幅を大幅に縮小し、通期の営業黒字化も視野に入っている。それだけに、妖怪ウォッチとポケモンが発売される年末商戦は黒字化に向け好材料といえる。
ただ、据え置き型ゲーム機が主流の海外では、任天堂の「WiiU(ウィー・ユー)」はライバル・ソニーの「プレイステーション4」の後塵を拝しており、苦戦が続いているのが実情だ。
ゲーム業界に詳しいアナリストは「任天堂の年末商戦はとくに国内は盤石で、営業黒字化は可能だ。ただ、真の復活にはWiiUの爆発的な販売増が不可欠で、3DSが好調なうちに手を打てるかが鍵だ」と分析する。
任天堂にとって3DS頼みの状況が続いているが、海外売上高比率が7割を超える任天堂にとっては、まず何よりもWiiU向けのヒット作が必要なのは間違いない。