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関電「聖域なき経営効率化」限界 再値上げ打診…4年連続赤字に現実味

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関電「聖域なき経営効率化」限界 再値上げ打診…4年連続赤字に現実味

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 関西電力が18日までに電力料金の再値上げの意向を政府に打診したのは、原発停止に伴って火力発電向け燃料費が膨らみ、財務悪化に歯止めがかからないからだ。関電は2013年度まで3年連続で最終赤字に陥り、今年度の赤字も現実味を帯びる。原発再稼働が見通せない中、電力各社の財務は危機的な状況に達しており、電気料金の引き上げが広がる懸念もくすぶる。

 赤字が続く関電は「聖域なき経営効率化を進める」(八木誠社長)とし、景気に悪影響を与えかねない再値上げの回避に向け調整を重ねてきた。人件費圧縮や資産売却などを進めるが、それでも限界がある。14年4~6月期の連結最終損益も290億円の赤字となり、黒字転換への道筋は描けていない。

 「このまま14年度も最終赤字になれば、繰り延べ税金資産の計上は難しくなるだろう」。市場関係者の間では、関電のさらなる財務悪化を予想する声が増えている。

 繰り延べ税金資産は、支払った税金が将来戻ってくることを見込んで計上する会計上の資産だが、黒字が見込めなければ計上できない。

 14年度も赤字となり、繰り延べ税金資産が認められなければ、財務の健全性を示す自己資本比率が6月末の15.2%から「危険水域」とされる1桁台に落ち込む恐れがある。

 原発が止まる前の10年度でみると、発受電電力量に占める原発の割合は関電と北海道電力が44%と最も高く、北海道電の財務悪化も深刻だ。一足先に再値上げを申請した北海道電の6月末の自己資本比率は8.5%とすでに10%を割り込み、借金が資産を上回る「債務超過」の危険性もはらんでいる。

 同月末の九州電力の自己資本比率も9.6%と、危険水域の1桁台まで下げた。電力各社の財務状況は危機的で、銀行からの借り入れなど資金調達が難しくなる恐れがある。資金繰りの悪化が設備投資の遅れや人件費の過剰な圧縮につながれば、電力の安定供給にも支障をきたしかねない。

 原発再稼働が見通せない中、財務状況を改善させる手立ては乏しく、今後、各社が再値上げに向け本格的な検討に入る公算が大きい。

 第一生命経済研究所の試算によると、電力料金が20%引き上げられると、3年後の国内総生産(GDP)を6.2兆円引き下げる。原発再稼働の遅れは、日本経済に深刻な打撃となりかねない。

 関西電力の連結最終損益と自己資本比率の推移

         最終損益  自己資本

         (億円)  比率(%)

 2009年度  1271  25.0

   10年度  1231  24.8

   11年度 ▲2422  20.1

   12年度 ▲2434  16.5

   13年度 ▲ 974  15.3

 ※▲はマイナス

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