SankeiBiz for mobile

【どこまで進む? 再生可能エネルギー】太陽電池の変換効率30%目指す

ニュースカテゴリ:社会の話題

【どこまで進む? 再生可能エネルギー】太陽電池の変換効率30%目指す

更新

 □東京工業大学大学院教授・小長井誠氏

 太陽光発電の大量導入が始まる中、海外メーカー製のシェアが上昇している。コスト面の有利さが理由だが、日本勢の巻き返しは可能なのか。40年以上にわたり太陽電池を研究している東京工業大学の小長井誠教授は「物性的な制限を超えて変換効率をさらに上げることが重要だ。その研究も始めた」と指摘する。

 --国内市場で海外メーカーの太陽電池が増えている

 「コスト面が主な理由だが、信頼性や光を電気に変える光電変換効率では日本メーカーがまだ世界トップだ。これから太陽光発電が国内で2000万キロワット、3000万キロワットと増え、世界生産も現在の年間4000万キロワットから1億キロワットに増えていくと予想される中で、シェア3割をとれれば相当な量になる。ただ信頼性や変換効率の要求がより高くなり、中小メーカーは生き残れなくなるだろう」

 --化合物系の太陽電池も出てきている

 「シリコン系に比べ効率の面で劣るが、それでもある程度のシェアは確保できるだろう。世界生産量が年1億キロワットになったとき、シリコン系が約8割を占め、その他が化合物系などになると予想している。だが、1億キロワットの1割でも相当な量だ」

 --光電変換効率はまだ上がるのか

 「例えば結晶型シリコンで現在の世界最高はパナソニックの25.6%。シリコン太陽電池の理論限界値は28~29%だから限界値に近づいている。これを突破するには物性的制限を打破する必要がある」

 --具体的にはどのような方法か

 「太陽光は、すべての色の光が電池(半導体)によって電気に変換されるわけではなく、熱となって損失が生じる。そこで光の色によって適材の半導体を複層化すれば、層ごとで高効率の変換が可能となり、全体の効率も上がる。今の太陽電池は表面が黒っぽいが、光の色に対応したさまざまな色の太陽電池ができるかもしれない」

 --新しい構造のシリコン太陽電池の研究を始めた

 「ナノワイヤー太陽電池と称し、4月から福島県郡山市で研究を始めた。これは基板上に2~3ナノ(1ナノは10億分の1)メートルの突起状のナノワイヤーを成長させ、複層化させて変換効率を高める技術だ。5年後には効率30%を目指している。この文部科学省のプロジェクトには民間企業も参画しており、物性限界を超えたい」

【プロフィル】小長井誠

 こながい・まこと 1977年東京工業大学大学院理工学研究科博士課程修了。81年助教授、91年から教授。再生可能エネルギー協議会副代表。静岡県出身。64歳。

ランキング