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鉄道車両も炭素繊維で軽量化 川重、世界初の「次世代台車」
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川崎重工業が開発した次世代の鉄道車両台車「efWING」。世界で初めてCFRPを採用した 川崎重工業が開発した鉄道車両の新型台車「efWING(イーエフウィング)」。世界で初めてというCFRP(炭素繊維強化プラスチック)を採用した特殊な構造により、軽量化による省エネ性能の向上に加え、脱線に対する安全性や乗り心地も高めている。川崎重工は鉄道車両を中核事業の1つと位置付けており、「次世代の台車」として国内外で売り込む。
CFRPは軽くて、強度が高いことが特徴で、航空機の胴体などに使用されている。川崎重工は米ボーイング向け部品などを手がけており、これまでCFRPのノウハウを蓄積してきた。
鉄道車両の台車を軽量化する場合、従来は一部を薄くするなど形状を変更する手法が一般的だった。今回は素材を見直し、業界で初めてCFRPを採用した。
通常の台車は鋼製で、メーンフレームである「側(がわ)バリ」と、レールから伝わる振動を抑制する「軸バネ」で構成されている。
efWINGは、CFRP製のフレームを弓のようなV字型にして、サスペンション機能も持たせた。これにより、側バリと軸バネの機能がCFRP製のフレームに集約され、構造が簡素化、軽量化につながった。
台車フレームの重量は従来比で約40%削減することができ、1両あたりでは約900キロ軽くなったという。この結果、走行燃費が向上してランニングコストの低減につながるほか、CO2(二酸化炭素)排出量の削減にも寄与する。例えば、年間走行距離が15万キロで、電気代を1キロワット時あたり12円とした場合、1両で年間8万9000円の節約になるという。
さらに、車輪がレールに与える力が安定することで乗り心地が向上する。また、曲線や整っていない線路を走行する際、車輪からレールに伝わる上下荷重が減少して車輪が浮く「輪(りん)重(じゅう)抜け」が起こり、脱線の一因になるとされるが、efWINGなら輪重抜けの度合いを改善させ、走行時の脱線のリスクが小さくなる。
川崎重工は、efWINGの実用化に先駆け、2012年6月に米国鉄道協会運輸技術センターで約4500キロの走行試験を実施。基本性能に加え、こうした走行安全性能などを確認した。
課題はまだ納入実績がないことだが、14年度には国内でefWINGを搭載した車両が実際に営業運転を行う見通しだ。同社は「これまでCFRPを使った台車自体がなかったので、まずは実績をかさね、国内や海外で展開していきたい」と話す。
川崎重工は、車両事業を航空や二輪と並ぶ中核事業の1つと位置付けている。車両事業の13年度の売上高は1550億円となる見通しだが、20年度には2600億円まで高める目標だ。そのためには国内だけでなく、米国やアジアなど海外での受注が重要になる。
米ニューヨーク州交通局傘下のロングアイランド鉄道から通勤車両を受注するなど着実に海外展開を進めているが、「ビッグ3」と呼ばれる独シーメンス、カナダのボンバルディア、仏アルストムなどとの競争は激しくなっている。
efWINGは、13年度のグッドデザイン賞金賞を受賞するなど、その斬新なデザインも評価されている。同社では「他社と技術で差別化して、顧客に提案していく」と意気込む。(田村龍彦)