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五輪役員派遣の制度見直しを 選手超える人数…日本の悪しき伝統

ニュースカテゴリ:企業の経営

五輪役員派遣の制度見直しを 選手超える人数…日本の悪しき伝統

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ソチ五輪・閉会式に入場する浅田真央ら=23日、ロシア・ソチのフィシュト五輪スタジアム 【スポーツi.】

 寝不足覚悟でも思わず、くぎ付けになる。それが4年に1度の五輪の魅力に違いない。スポーツにおける日本代表という響きに、遅い時間帯でも「頑張れ!」とエールを送りたくなるのが自然な姿だ。

 ソチ五輪開幕前、かつて冬季五輪のヒロインだった日本選手団の橋本聖子団長は「メダル目標設定は1998年長野五輪の金メダル5個、メダルは合計10個を超えること」と、高らかに宣言した。

 前半戦のスタートダッシュにつまずいた日本選手団だが、フィギュアスケート男子の羽生結弦の金メダルが引き金となり、『金1、銀4、銅3』のメダルを獲得した。入賞者も28人。自国開催の長野大会以外では、最多となるメダルと入賞だ。

 「チームジャパンが一丸となった結果」(橋本団長)と喜ぶのも分からないではないが、反省も多い冬季五輪だったといえるのではないか。

 強化費の規模違い

 表彰台が確実視された女子ジャンプ・高梨沙羅がメダルをとれず、競技人生の集大成で挑んだフィギュアスケート・浅田真央もショートプログラムで本番での弱さを露呈。「五輪の魔物」とはいえ、勝てるはずの種目で落としたことは確かだ。

 実際、日本のウインタースポーツの内情は厳しい。フィギュアスケートを除けば、他の競技では活動資金がないに等しいのだ。多くの競技団体が財政難にあえぎ、五輪出場の決まった多くの選手が実業団での廃部やリストラを経験している。

 それでも「五輪に出たい」と自分の貯金を崩してアルバイトをしながら文字通り“食いつなぐ”選手がいる。今大会で予選を勝ち抜き、ソチに乗り込んだ女子アイスホッケー日本代表のスマイルジャパンの面々も、そうだった。

 とにかく強化費が少ない。いや、ないといっても過言ではない。ならば「国の支援を!」ということになる。日本経済はデフレ不況から脱しつつあるものの、ない袖が振れないのは日本政府も同じだ。

 昨夏の国庫補助金から日本オリンピック委員会(JOC)に配分されたロンドン五輪の強化費は25億9000万円。多い少ないは別として、五輪にむけた強化費は、なるほどこの3年間で3倍近く増えている。

 しかし、多くの競技団体関係者が「足りない以前の問題」と嘆くのは他国に比べて、規模が小さすぎることだ。

 ロンドン五輪の場合、ドイツの274億円を筆頭に米国が165億円、韓国でさえ106億円を投入した。これに対し、3倍に増えた日本が25億円である。

 どの選手に取材しても「国が金メダルを求めるなら、もっと強化費を」と本音を漏らす。もっとも、長野大会を除き、過去最多メダル&入賞になったことで強化費問題は4年に1度の話題として、消えてしまう可能性もある。

 選手超える数

 おかしなことは、他にもまかり通っている。日本選手団としてソチに派遣された「選手」113人に対し、「役員」が135人という構成だったことだ。

 選手団全体で役員比率が50%近いのは、日本だけが続ける悪しき伝統のひとつ。冬の五輪はもちろん、夏の五輪でもこの傾向は変わらない。

 五輪取材で現地に行くたび、日本選手団の役員の多さは肌で感じてきた。開会式と閉会式の映像をみても、選手を探すのが一苦労なほどだ。

 ソチ大会前、「金メダルを取って帰りはビジネスクラスかファーストクラスで帰国したい」と口にしていたのがスキー男子ジャンプの葛西紀明だ。

 金メダルこそならなかったとはいえ個人は銀、団体は銅の2つのメダルを獲得。幸い41歳の「レジェンド」の帰国便がビジネスクラスだったのは、搭乗したANAの粋な計らいだった。あまり、こうしたことは言いたくないが、日本とソチ間の移動が往復ビジネスクラスの役員は何人もいるのだ。

 バブル経済崩壊から20年あまり。日本の産業界は無駄なことのすべてをそぎ落とし、体質改善を図ってきた。

 そろそろ、本気にならないと、日本が五輪強豪国となる日は永遠にやってこないのではないか。(久保武司)

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