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素材メーカー値上げ続々、家計へ波及 消費増税とダブルパンチ懸念

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素材メーカー値上げ続々、家計へ波及 消費増税とダブルパンチ懸念

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値上げされる主な素材  円安による原料や燃料の輸入価格上昇などを背景に化学、製紙などの素材メーカーが相次いで製品の値上げに踏み切っている。素材価格がアップすれば食品包装材やレジ袋、プラスチック製品のほか建材や水道管など幅広い製品の製造コストも上昇せざるを得ない。来年4月の消費税増税とのダブルパンチとなって消費を冷え込ませる恐れもあり、最終製品を扱うメーカー各社はコスト増の転嫁をめぐって難しい判断を迫られそうだ。

 「エネルギーコスト高に原料高、さらに円安…。これだけそろうと、値上げせざるを得ない苦しい状況を取引先も理解してくれる」。塩ビ工業・環境協会の会長を務める信越化学工業の森俊三社長は18日の会見で、価格維持が難しい現状を訴えた。

 同社や大洋塩ビなど塩化ビニール樹脂大手は、水道管などに使われる塩ビの値上げを11月までに打ち出した。原料となるナフサ(粗製ガソリン)の国産標準価格が1キロリットル当たり約6万7000円をつけ、この1年で約2割も上昇。

 塩ビ樹脂の国内出荷が7カ月連続で前年を上回るなど需要が高まっていることもあり、大手各社は一気に値上げ交渉を本格化させている。

 三菱化学や三井化学、旭化成などの系列メーカーもレジ袋などの原料となるポリエチレンやポリプロピレンの値上げを発表。コストアップ分の製品価格への転嫁を急いでいる。

 値上げを後押しするのが、景気の上昇傾向に支えられた好調な国内需要だ。住友化学の十倉雅和社長は「円高時よりも輸入品が入りにくくなったことで、値上げが受け入れられる環境になってきた」と打ち明ける。

 原料となるパルプの輸入価格の上昇などで製紙メーカーも値上げに動き、復興関連や首都圏再開発など向けの需要が好調な鋼材の価格も引き上げが進む。

 その一方で懸念材料もある。樹脂メーカーのプラント稼働率は損益分岐点とされる8~9割にとどまっており、値上げが需要減につながれば採算割れとなる恐れも抱え、「思惑通りに値上げ交渉ができないこともある」(樹脂メーカー幹部)。

 また、最終的に消費者が手にする製品やサービスに値上げが波及し、所得の増加を伴わない中で物価が上昇すれば、景気の行方に悪影響を及ぼしそうだ。

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