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航空産業強化へ日本一丸 東レなど5社も新メンバーに
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プロジェクトに参加する東大や企業の代表者ら。手を組んで結束をアピールした=12日、東京都目黒区の東大駒場IIキャンパス 日本の航空機産業の競争力強化に向けた産学官連携のプロジェクトが軌道に乗り始めた。東大と三菱重工業や米ボーイングなどの4社が進めていたが、12日、機体を軽量化する炭素繊維メーカーの東レなど5社が新たにメンバーに加わった。日本勢が協力して製造技術を向上させ、航空機市場で存在感を増す新興国メーカーを迎え撃つ。
プロジェクトは昨年6月に始まった。東大の研究力とメーカーの技術力を共有し、経験や技能が重視されがちな「ものづくり」に科学的な視点を持ち込む狙いだ。
背景には、新興国勢の台頭がある。燃費性能に優れたボーイングの新型旅客機「787」で機体の約35%を製造するなど、日本企業は技術力を強みにしてきた。しかし、中国やインドなどのメーカーがコスト競争力で攻勢をかけ、生産技術も向上。日本勢は「安閑としていられない」(三菱重工の鯨井洋一常務執行役員)状況だ。
さらに、航空機市場はアジアの経済発展や格安航空会社(LCC)の普及を背景に成長が見込まれるが、完成機メーカーの米ボーイングと欧州エアバスの受注競争は激化。部品メーカーは低コストで高品質の製品を製造することが一層求められる。
ただ、企業単独での取り組みには限界がある。プロジェクトではすでに、機体に使うチタン合金の加工を研究、工程の短縮などで約30%のコスト削減につなげた。各社は順次、実際の生産現場に反映させる見通しだ。
今回、新たに東レや工作機械のDMG森精機などがメンバーに加わったことで、軽量で航空機の燃費向上効果が期待される最先端の炭素繊維複合材料(CFRP)の切削方法などの研究が期待される。
共同研究の拠点となる東大生産技術研究所の加藤信介副所長は記者会見で「新興国の追い上げを上回る速度で開発を進め、日本の優位を保つ必要がある」と意欲を述べた。家電などの生産が新興国にシフトする中、今回の取り組みが成果を出せるかが、国内の航空産業育成の試金石になりそうだ。