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機種変プラン、再編加速…米携帯業界、はやサービス合戦 ソフトバンク参入で活気
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ソフトバンクによる米携帯電話3位スプリントの買収で、米携帯電話業界のサービス競争が激しさを増してきた。スプリントが通話料金値下げで攻勢をかければ、ライバル会社も機種変更の新プランや再編戦略で対抗。ソフトバンクの米市場進出で業界がにわかに活気づいている。
スプリントは11日、使い放題の定額制プランを導入した。月額80ドル(約7900円)払えば通話やデータ通信が無制限で利用できる。首位ベライゾン・ワイヤレスと2位AT&Tは同様のプランを原則廃止し従量制に切り替えつつある。
それを狙い撃ちして顧客を奪おうというスプリントのヘッセ最高経営責任者(CEO)は「われわれのプランは利用者に驚きを与えるはず」と自信をみせる。
業績不振のスプリントは昨年まで6年連続で赤字を垂れ流している。新サービスの発表はソフトバンクが買収手続きを完了した翌日で、電光石火で知られるソフトバンクの孫正義社長がさっそくてこ入れに動いた格好だ。ソフトバンクはスプリントの財務基盤強化にも50億ドルをつぎ込む。
慌てたのが他社だ。ベライゾンは18日、機種変更が可能となる期間を短縮すると発表した。これまで端末購入から最低2年間の利用が必要だったが、半年経過後に分割払いの端末代金の半額を支払うことで機種を変更できるようにした。
AT&Tは1年ごと、4位のTモバイルUSAは1年に2回の機種変更が可能なプランをそれぞれ打ち出した。
再編も加速している。AT&Tは今月、プリペイド(料金前払い)方式の携帯電話会社リープ・ワイヤレス・インターナショナルの買収を発表。同社は約500万人の契約者を抱え、35州でサービスを展開している。
ベライゾンには英ボーダフォンが45%出資しているが、ベライゾンの親会社はボーダフォンの保有株の買い戻しを検討しており、経営を強化する方針だ。
スプリントはソフトバンクの傘下入りと合わせ、無線通信会社クリアワイヤを完全子会社化した。クリアワイヤの保有する豊富な周波数帯が、次世代高速通信「LTE」のサービス拡充に欠かせないためだ。AT&Tが買収したリープも豊富な周波数帯を抱える。
ソフトバンクのスプリント買収を承認した米連邦通信委員会(FCC)のクライバーン委員長代行は「米消費者の選択肢を増やし、値下げも促進する」とサービス競争や業界の活性化を期待していたが、その見立てが早くも的中し始めたといえそうだ。(ワシントン 柿内公輔)