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パナソニック戦略に株主興味なし? 「ゴーン待望論」経営陣へ痛烈批判も

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パナソニック戦略に株主興味なし? 「ゴーン待望論」経営陣へ痛烈批判も

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パナソニックの株主総会に訪れた株主=大阪市中央区の大阪城ホール  大阪市内で26日に開催されたパナソニックの株主総会。株主からは2期連続となる7000億円超の巨額赤字に批判が集中したが、津賀一宏社長が進める成長戦略への異議はほとんど聞かれなかった。

 関係者は一様に胸をなで下ろすが、パナソニックの将来像が市場に伝わっておらず、“突っ込みどころ”が見当たらなかったのが真相のようだ。「社長肝いりの成長戦略がうまくアピールできていない」(アナリスト)ことを浮き彫りにした株主総会でもあった。

 「予想より穏やかだった」

 「思ったよりも、穏やかな株主総会だった」。終了後、ある社員は安堵(あんど)の表情を浮かべた。

 総会では、株主から巨額赤字に対する批判が殺到。とくに、1年前の総会でV字回復を宣言したにもかかわらず、わずか約4カ月後の10月に平成25年3月期の業績予想を下方修正した“失態”を舌鋒(ぜっぽう)鋭く責める質問が目立った。

 ただ、製品ごとに開発・生産・営業を一元管理する「事業部制」の復活、自動車と住宅関連事業を30年に売上高2兆円規模に引き上げる-という津賀社長が打ち出した成長戦略についてはほとんど批判を浴びなかった。

 津賀社長にとっては初の株主総会。関西のある機械メーカー幹部は「パナソニックは、社長肝いりの戦略が株主総会で集中砲火を浴びるのを恐れていた」と分析していたほどだ。

 その意味では、「不幸中の幸い」とするパナソニック関係者は多かった。

 株主は、成長戦略に興味なし?!

 しかし一方で、「これで良かったのか」と心配する関係者も。

 成長戦略が批判の的にならなかったのは、株主が戦略に理解を示したのではなく、「関心を抱かなかっただけ」という恐れもあるからだ。

 同社OBの一人は「戦略が、株主に理解されていない」と危機感をあらわにする。

 「賞味期限切れの経営者には辞めてもらい、日産自動車のカルロス・ゴーンみたいな人に舵を切ってもらいたい」。総会では、男性株主が、わざわざ他業種の経営者の名前をあげて、業績改善を迫る一幕があった。現経営陣への痛烈な批判だ。

 誰も議論しない“黒衣”の将来

 津賀社長は、有機EL(エレクトロルミネッセンス)テレビの量産技術を他社に有償で供与する方針を打ち出すなど、従来の家電メーカーのビジネスモデルを抜本的に変革しようとしている。

 消費者向けの家電製品だけではなく、企業向けに技術・製品を販売する“黒衣”のビジネスを強化する方針だ。

 良い商品を消費者に安く大量に供給する「水道哲学」に象徴されるパナソニックの経営スタイルは180度転換されようとしている。その“歴史的瞬間”にもかかわらず、株主からは、新戦略に対する質疑や批判があまりにも少なかった。このため、「パナソニックの将来像について前向きな議論があまり交わされなかった」(証券アナリスト)という指摘もある。

 下手をすれば、「パナソニックは将来像をうまく描けていない」という烙印(らくいん)を押される恐れもある。津賀社長の発信力が試される1年になりそうだ。

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