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なぜ?ゲーム世界のリアル化が加速 人気作品でもヒット連発は限界

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なぜ?ゲーム世界のリアル化が加速 人気作品でもヒット連発は限界

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昨年ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)に設けられた「モンスターハンター」のコーナー。キャラクターの等身大人形が公開された  カプコンやバンダイナムコゲームスなど家庭用ゲーム機メーカーが、テーマパーク事業を加速させている。

 架空のゲームやアニメの世界観を幅広い世代に体感させて認知度を上げる“リアル化事業”の一環だが、ソーシャルゲームに押され、ゲームソフト本体の売り上げが期待できない中、本業からゲームキャラクターや世界観を応用するビジネスへと、軸足を移す可能性を指摘する識者も多い。

 しかし、テーマパーク事業も参入企業が多く、内容の均質化で目新しさを失うリスクを抱えており、展開手法の工夫が求められている。

 新作が毎回当たるとは限らない

 「これまで、ヒットしてきた歴史ある人気ゲームソフトであっても、新作が毎回、当たるとはかぎらない」。ある家庭用ゲーム機ソフトの関係者は、そう打ち明ける。

 昨年10月に発売されたカプコンの新作ゲーム「バイオハザード6」は同年12月末時点で売り上げが480万本突破するなど好調だが、「7、8と続けて発売しても、同じシリーズで面白さを向上させるのは限界があり、6を超える好調な成績が続かないかもしれない」(業界関係者)。

 だからこそ、ゲームで遊ぶ娯楽性だけではなく、人気シリーズの「知名度」を売り込むテーマパーク事業を展開する方が「確実に収益を得やすい」(証券アナリスト)実情がある。

 カプコンは、昨年7~9月、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)で、人気ゲームソフト「モンスターハンター」に登場するキャラクターの等身大人形が公開するコーナーなどを開催。

 同社が静岡県内で経営するゲームセンターでは、ゲーム内の漁業や畑のシーンをイメージした大型の道具を設置。子供たちが遊具での遊びを通じて生活を体験できる工夫が凝らされている。

 高い投資と背中合わせのリスク

 「エンターテインメント分野の競合は、広くみればテーマパークや遊園地なども含まれる」と話すのは、バンダイナムコゲームスの幹部。同社の関連会社が今夏、少年マンガ誌「週刊少年ジャンプ」の人気作品の世界観を再現したアトラクションなどが楽しめるテーマパークを、東京でオープンする方針だ。

 しかし、テーマパーク事業は設備投資が高額な半面、失敗したときにこうむる打撃も大きい。

 ホンダの子会社は平成21年9月末、子供が運転できる乗物やゴーカートなどを備えた、モータースポーツをテーマにした遊園地「多摩テック」(東京都日野市)について、入場者の減少を理由に閉鎖。昭和36年にオープンしたテーマパークの先駆けだったが、「長年運営が続いたとしても、一度経営が傾くと閉鎖するしかなくなるシビアな世界」と、業界関係者はそう指摘する。

 任天堂も慎重ながら関心

 「独創的なやり方でテーマパークが実現でき、任天堂のビデオゲーム分野の強みが生きる方法を発明されたら、するかもしれない」。

 平成22年6月。任天堂の岩田聡社長も株主総会で「テーマパークのようなものをつくる未来像はあるか」という株主の質問に、前向きながら慎重な回答をした。

 「いくら人気キャラクターが使えても、アトラクションの見せ方や事業展開によほどの工夫を凝らさなければ既存のテーマパークには勝てない」。テーマパーク事業に関わるある事業者はそう断言する。

 ソーシャルゲームに敗北を喫する家庭用ゲーム業界が軸足を移すには、高いハードルがありそうだ。(板東和正)

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