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日本車勢、技術定評も見栄えなど課題 VWと現代の躍進際立つ中国市場

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日本車勢、技術定評も見栄えなど課題 VWと現代の躍進際立つ中国市場

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中国の上海モータショーで人気を集めている現代自動車のブース=21日  尖閣諸島(沖縄県石垣市)の国有化をめぐる日中間の摩擦のあおりを受け、中国で日本車の低迷が続く中、独フォルクスワーゲン(VW)や韓国の現代自動車の躍進ぶりが際だっている。反日感情で劣勢に立った日本勢を尻目に、派手な広告宣伝や巧みなマーケティング手法を駆使し、開催中の上海モーターショーでも2社は大きな存在感を示している。

 アウディブランドを含めたVWの中国での販売台数は、1~3月に前年同期比21.3%増の76万9200台と大幅に伸びた。モーターショーの会場で同社の関係者は、今年で進出30周年を迎えるなど中国に長く貢献してきたことをアピールしていた。

 VWの強さを支えるのは、中国に特化したデザイン開発やマーケティング手法だ。VWは開発センターを現地に置き、車体の形や内外装品の色、レイアウトなど目の見える部分に中国人の好みを取り入れたことが大きい。タクシーのほぼ全てにVW車が採用されていることも、中国の消費者に浸透する要因となっているとの指摘は多い。

 一方の現代自も、傘下の起亜自動車を含めた1~3月の販売台数は35%増の約39万台と絶好調。上海モーターショーの同社のブースには、特徴のあるデザインが目を引くスポーツカーなどに人だかりができていた。

 野村総研上級コンサルタントの張翼氏は「サッカーワールドカップのスポンサーを務めるなど、現代自の巧みな広告戦略が中国内陸部でのイメージ向上に役立っている」と指摘する。

 これに対し、北米や日本国内を主力とする日本メーカー勢は「先進国での需要は高いが、新興国向けでの人気は今ひとつ」(張氏)。安全面や環境対応など高い技術力に定評はあるものの、中国人が好む上質感や派手さ、見栄えでやや劣るという。

 特に、今後の拡大が見込まれる内陸部では根深い反日感情が以前からあるうえ、格好が良くて荷物も運べるスポーツ用多目的車(SUV)など大型車の人気が高いことから、セダンが主流の日本勢は食い込みにくい。

 「年間2000万台の需要があり、買い替え需要だけでも魅力的」(三菱自動車)との認識で各社が一致する中国市場は、世界戦略上で重要な位置を占める。しかし、このままだと韓国のサムスン電子にデザイン力などで水を開けられ、劣勢を余儀なくされたソニーやパナソニックといった日本の電機メーカーの二の舞いになりかねない。

 テレビやパソコンと同様に自動車もコモディティー(汎用(はんよう)品)化していけば、韓国勢に追いつかれ、追い越される可能性もある。日本の自動車メーカーは「目に見える性能や品質で差をつけ続けるしかない」(富士重工業の高田充専務執行役員)と危機感を強めている。(上海 飯田耕司)

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