【経済インサイド】ハチの輸入拡大の背景 “泣きっ面にハチ”な国内養蜂業者の悲運 (1/3ページ)

シロツメクサで吸蜜するセイヨウオオマルハナバチ=埼玉県北本市(埼玉県自然学習センター提供)
シロツメクサで吸蜜するセイヨウオオマルハナバチ=埼玉県北本市(埼玉県自然学習センター提供)【拡大】

  • 栃木県足利市の雑貨・カフェ店「プラザハマダ」は、自社ビルの屋上で養蜂に取り組んでいる

 花粉交配や害虫駆除に利用されるハチの輸入量が拡大している。東京税関によると、平成29年は前年比4.9%増の約348万匹となり過去最高を記録した。従来の殺虫剤が効かない害虫を駆除するための利用や農業参入する企業の増加で需要が伸びたことが主因という。ただ、その背景には国内養蜂業の“悲運”も大きく関係しているようだ。

 今ではビニールハウス内でのトマトなどの栽培に欠かせないハチ。主に日本に輸入されているのは、ハウス内の果物や野菜の花粉を運んで受粉させる花粉交配用のクロマルハナバチと、害虫を駆除するコレマンアブラバチである。害虫を駆除する天敵は殺虫剤の代替品となることから「生物農薬」とも呼ばれている。殺虫剤の散布回数を減らすことでコスト削減にもつながり、環境負荷も少ないなどのメリットが多く、利用が拡大している。

 実は、花粉交配に使われるのは国内で育てられたミツバチが主流だ。だが、28年4月の熊本地震の影響で国内の主要な養蜂業が集まる熊本県が被災し、ミツバチ不足が一気に顕在化した。その後、生き残った熊本のミツバチの多くを北海道に移して飼育するも、今度は北海道が前例のない台風の連続直撃で被害を受けた。東京都内のある輸入業者は「まさに“泣きっ面にハチ”という複合的な被害により、国内のミツバチ不足が加速した」と、その悲運ぶりに同情する。

ハチの需要増で輸入も増加