輸入制限で米経済に“自爆”懸念 雇用喪失14万人超、ブッシュ政権の二の舞いも (2/3ページ)


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 シンクタンク「ヘリテージ財団」の試算では、輸入制限によって鉄鋼産業を中心に約3万3千人の雇用が創出される一方、逆に鉄鋼を消費する業界で約17万9千人の雇用が失われ、差し引き約14万6千人が職を奪われると警鐘を鳴らす。

 輸入制限では、主な標的とされる中国からの報復措置も予想される。

 特に中国は米国の農産物の主要な輸出先だ。農業団体や関連業界の連合組織である「農業従事者とその家族のための米国人」(AFF)は3月27日、声明を発表し、「(報復措置で)雇用が失われるのは仮定の話ではない」と強調。「地方の有権者はトランプ氏に投票したが、支援は無条件で続くものではない」として、トランプ政権の判断を批判した。

 もっとも、米国の保護主義的な政策は、今に始まったことではない。

 2002年3月、ブッシュ(子)大統領は「米国の産業と労働者が(他国と)同じ土俵で競争できるようにする」などとし、経営難の国内鉄鋼産業を守るため、日本製も含む鉄鋼製品に8~30%の関税を上乗せするセーフガード(緊急輸入制限)を発動した。

 当時、日本鉄鋼連盟の千速晃会長は「米国内のユーザーに過大な犠牲を強いる」と、輸入制限が米国経済に悪影響を与えることを指摘していた。

 実際、セーフガードにより米国内の鉄鋼価格は3~4割上昇。値上がりした鋼材を購入する自動車関連業界などの競争力が失われ、20万人の雇用が減少したともいわれる。結局は世界貿易機関(WTO)が03年に協定違反と認定。欧州や日本が反発して対抗措置に動いたため、ブッシュ(子)政権は期限途中でセーフガードの措置を打ち切った。

保護主義的な政策、競争力に悪影響も