米国が北朝鮮の泥沼に足をとられるのを嫌い、北京に頼るのは歴代の政権もそうだったから、さほど驚かないが、トランプ氏は中国に対する正論までも封じてしまった。正論とは、「われわれは中国を再建した。中国がわれわれから奪ったカネでだ」との大統領選挙戦中の発言だ。
米から資金奪う
グラフは米国のモノの対中貿易赤字と中国からの米国債・政府機関債購入を合算した資金流出入と人民元相場の推移である。世界最大の債務国米国は外部からの資金流入に依存する。貿易赤字は大きくても、相手国がその分を対米証券投資で還流させれば、米経済は安定する。中国は米国に貿易黒字を証券投資で資金還流させるどころか、「奪う」一方で、昨年は年間3500億ドルの黒字に加えて1300億ドルの米国債・機関債を売却、合計で4800億ドル、米国からドル資金を手に入れた。2001年の世界貿易機関(WTO)加盟以来、17年2月までの累計で、米国から34兆ドル以上の資金を「奪い」、経済超大国にのし上がってきた。この間、海外には54兆ドル超が流出しているが、中国分はその63%を占める。しかも、米国からの流出は人民元安と連動している。中国は為替操作で膨張するのと対照的に、米国では大量の雇用が失われたことはまぎれもない事実なのだ。
「北朝鮮問題で協力しなければ、対中通商強硬策をとる」というトランプ・カードを引っ込めた代償は、世界の市場はもちろん、「米国第一主義」のトランプ政策にも及ぶだろう。
■20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議の議長国会見のポイント
・世界経済の見通しは明るいが、懸念は山積している。
・幅広い人に恩恵が行き渡るような成長の実現を目指すことで一致。
・国際情勢の緊迫化など将来のリスクに対抗するため、経済をより強固にする必要がある。
・保護主義は世界経済に打撃を与える。世界全体の経済成長に向けて自由貿易が重要との認識を共有。7月の首脳会合で継続協議。
・テロ資金源の根絶が極めて重要な問題であると各国が認識。
(ワシントン 共同)