FRBイエレン議長の新たな悩みの種 読めないトランプ新政権の功罪

 【ワシントン=小雲規生】追加利上げに踏み切った米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長にとって、トランプ次期政権下での金融政策運営は難しいものになりそうだ。不透明なトランプ氏の経済政策が米国経済に混乱をもたらす可能性があるためで、イエレン氏は新たな悩みの種を抱えた形だ。

 トランプ氏は選挙戦で大規模なインフラ投資や個人や企業への大幅減税を公約。株式市場は景気拡大への期待に沸き、ニューヨーク株式市場のダウ工業株30種平均は大統領選後1カ月で6・6%も値上がりした。

 しかし、失業率が低いなかでの財政政策の活用には物価上昇率が高くなりすぎるリスクもある。またトランプ氏は中国やメキシコなどから米国への輸出の大きさを問題視し、関税引き上げなどの保護主義的な政策を明言しているが、貿易活動の低下はかえって米国経済を減速させかねない。

 FRBは1年前の2015年12月に9年半ぶりの利上げに踏み切った際、16年中に4度の利上げを見通していた。しかしその後、中国経済減速の鮮明化や英国の欧州連合(EU)離脱決定など海外経済の混乱という逆風を受け、実際の利上げ回数は今回の1度だけに留まった。

 FRB内には市場に示した見通しと実際の利上げペースが食い違うことはFRBに対する信任の低下につながるとの声もある。イエレン氏はトランプ氏の経済政策という新たな波乱要因を抱え込み、今後も難しい金融政策のかじ取りを迫られることになりそうだ。