人民元SDR入りから1カ月 中国が元安容認、対ドルで6年ぶり安値 (2/2ページ)

 さらに「規制だらけだった中国の通貨政策も、SDR入りで域外との資本取引解禁や、完全な変動相場制への移行に駒を進めざるを得なくなる。当局の相場管理が及ばなくなれば元安に振れやすい」(アナリスト)との見方から市場では先安観が広がる。

 また、「米の利上げ観測で(ドル買い元売りを見越した)中国からの資本流出が加速した」(丸紅中国法人の鈴木貴元・経済調査チーム長)との面もある。

 9月末の中国の外貨準備高は3兆1663億ドル(約330兆円)で前月比で188億ドル減少。11年5月以来、約5年ぶりの低い水準に落ち込んだ。

 岡三証券の上海駐在チーフエコノミスト、後藤好美氏は、「SDR入りで市場の需給が相場に一段と反映されやすくなったことも元安の要因のひとつ」とした上で、「SDRブランドを手にした中国は(元安による)『弱い通貨』とのレッテルで『人民元の国際化』が遅延することは望んでおらず(相場の)安定化をめざすだろう」とみている。

 いずれにしても、中国は5年に1回の共産党大会を来年秋に控え、経済や金融政策の“失点”が党内権力闘争の道具に利用されやすいタイミングにある。市場の動向よりも、政治的な動機が大きく影響する異形の為替相場が揺れている。