人民元国際化 「経済圏」構築、日本引き込む 外圧で金融改革 権力闘争激化も (3/5ページ)

中国人民元の現状
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 1998年公開の米ディズニー映画「ムーラン」がいま、上海や香港の金融市場で話題に上っている。世界銀行が9月2日、IMFのSDR建て債券を中国で発行し、その愛称が「ムーラン債」と名付けられたからだ。従来も日本円建て債券が「サムライ債」、香港で発行された元建て債券が「点心債」と呼ばれ、通貨にかかわる国の歴史や文化のイメージが投影されてきた。

 映画は、老病の父に代わって男装して戦いに出た娘の「木蘭(ムーラン)」が異民族を相手に勝利を収めた、という古代中国の物語に基づく。ムーランは「名誉」を映画の中で歌い上げた。SDR入りはいわば元が国際通貨として「名誉ある信認」を得るための一歩だ。市場ではムーランと印象が重なった。

 元のSDR入りに先行した総額5億SDR(約700億円)の債券は、中国の国有商業銀行や三菱東京UFJ銀行などが争って引き受けた。

 ドルなど従来のSDR構成4通貨は(1)貿易規模と代金決済で使われる通貨の比率の高さ(2)金融市場で自由に交換や売買ができる-との条件が整っていた。

 だが、元は貿易で条件を満たすが、「外貨との交換や海外送金で規制が強く、国際通貨と呼べる水準に至っていない」(大手商社幹部)と指摘される。

「収益の大半は中国内で内部留保するか再投資に回すしかない」のが実情