パリ協定では、20年までに今世紀半ばまでの長期戦略の策定を求めている。ただ、日本が既に提出した30年度までに13年度比26%削減の目標ですら、厳しい省エネ対策や原子力発電所の着実な再稼働など、実現に向けたハードルは高い。
政府が原発の新増設や建て替えの議論を封印したままのため、30年以降はエネルギー起源CO2の約4割を占めている電力部門でどの程度削減できるかの見通しが立たない。勢い、現時点の議論は実現性が不透明な革新的技術の開発や、排出量取引などの規制的な手法に頼らざるを得ない。
3年に1度改訂するエネルギー政策の指針「エネルギー基本計画」の見直し議論が来年度にも始まるが、経産省内では「原発の再稼働が順調に進まない現状では、新増設の議論は時期尚早」(幹部)との声が漏れる。 温暖化対策をめぐる議論の土台となる電源構成(エネルギーミックス)が置き去りになれば、長期戦略は実現性を度外視した空論になる可能性がある。(田辺裕晶)