環境省は長期戦略を検討する有識者会議を7月に設置。年度内にカーボンプライシングを含む長期戦略の具体案をまとめる。
■電源構成置き去りなら“空論”も
こうした環境省の動きに神経をとがらせるのが産業界だ。経団連副会長や石油連盟会長を務めるJXホールディングスの木村康会長は「経済活動に負の影響を与え、研究開発や(環境技術の)イノベーションを阻害する。地球規模の温暖化対策にむしろ逆行する」と訴える。
経団連は、産業界が自主的に取り組む低炭素社会実行計画に基づき排出削減を進めている。規制的手法で排出削減を義務付けられれば企業の競争力を損なうとしており、民主党政権時に検討された国内排出量取引制度の導入も見送られた経緯がある。
欧州連合(EU)は温暖化対策の柱として域内排出量取引制度(EU-ETS)を05年に鳴り物入りで導入したが、リーマン・ショックや欧州債務危機による企業活動の低迷で排出枠が大量に余り、価格下落で機能不全に陥った。経産省は今年度内に有識者会議でこうした海外の事例などを研究し、来年度にも本格化する政府全体の長期戦略の検討に備える。