英国ではEUからの離脱決定に伴い、原子力発電所をはじめ、エネルギー関係の大型インフラ投資に逆風が吹いている。通貨ポンドの下落などで資金調達コストが上昇し、計画見直しを迫られる恐れがあるためだ。原発建設には東芝や日立製作所なども関わっており、日本企業にとっても他人事ではない。
ポンドは離脱決定後、対ドルで一時31年ぶりの安値に沈んだ。インフラ事業の受注企業は外貨で建設資金を調達する際に割高となるなどコストが上昇する。
英国がEUの域内エネルギー市場(IEM)から脱退を迫られれば低利の政策融資を受けられず、年間5億ポンド(約690億円)の追加費用が電気料金などに転嫁されるとの試算もある。
日本エネルギー経済研究所の小山堅首席研究員は、「コスト上昇に見合うメリットがない場合は、建設計画の見直しを求められる可能性がある」と指摘する。
なかでも注目が集まるのが原発建設だ。英国では相次いで閉鎖される老朽火力に代わり20年ぶりに原発の新設を進めており、東芝は2024年、日立は20年代前半の完成を目指す。
ただ、フランス電力(EDF)と中国企業が25年の稼働を目指す南西部のヒンクリーポイント原発は福島第1原発事故の影響で安全対策費が膨らみ、事業の最終決定が見送られている。
電力業界では、こうした賛否の分かれるプロジェクトが「見直しを迫られる」との見方も出ている。