中国がタイに急接近したのは2014年5月のタイのクーデター直後。軍事政権と距離を置く欧米や日本を尻目にいち早く政権を承認し、同年11月には他国に先駆け鉄道建設の協力でも合意した。事業参入を目指していた日本にとって「スピード感はまねできない」(外交筋)ほどの早業だった。
だが、具体的な協力をめぐる中国とタイの交渉は難航した。タイ側が求める建設資金の融資条件を中国が受け入れなかったうえ、中国側が鉄道沿線の大規模な不動産開発の権利を要求し続けたことが原因とされる。
タイのメディアには中国との協力による鉄道計画を批判する記事が目立ち始めた。交渉過程をよく知るタイ政府当局者は「中国は建設資材、労働者など全て本国から持ってこようとするうえ、金利などの条件面でも高圧的な姿勢を続けた」と語る。