産経新聞社の衆院選終盤情勢によると、自民党は単独で衆院の3分の2に当たる317議席をうかがう勢いだ。安倍晋三首相(党総裁)が選挙戦で経済政策「アベノミクス」の是非など経済政策を前面に出し、民主党政権への忌避感と合わせ共感を集めたからだ。ただ自民党執行部は「圧勝報道」で有権者に倦怠(けんたい)感が広がり、投票が鈍りかねないと警戒も強めている。
「『安倍さん景気を何とかしてくれよ』。この声に押されて私たちは政権を奪還しました。以来2年間は経済最優先、いわゆるアベノミクスを進めたのです」
首相は8日、愛知県安城市の街頭演説で、候補者紹介の後、いつものようにこう切り出した。
首相は遊説で、「アベノミクス」の説明に多くの時間を割いている。平成24年末に政権に返り咲いてから「100万人以上の雇用を創出」といった成果を列挙。外交などにはほとんど触れず、「2年前に戻るのですか」と訴える。
自民党幹部は「円高不況に苦しんだ民主党政権への拒絶感が予想以上に大きい」と指摘する。都市部だけでなく、景気回復が遅れていると指摘される地方部でも有利な戦いを演じていることも「首相の作戦が奏功している証し」(党幹部)とみている。
選挙ごとに新人が大量当選と落選を繰り返す「振り子現象」の懸念もほとんどなさそうだ。見込まれる投票率の低下も、現時点では公明党の組織票が加わる自民党には有利に働くとみられる。
しかし、圧勝報道が相次ぐことで、自民党支持者の投票所への足が遠のく可能性がある。首相は8日夜、党本部で選対幹部会議を開催。谷垣禎一幹事長らに対し「最後まで気を抜くな」と述べ、緊張感を持って臨むよう指示した。(水内茂幸)