【シンガポール=会田聡、坂本一之】甘利明・環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)担当相は23日、シンガポールで記者団に、日米と新興国が対立する国有企業改革の議論で「一定の方向性が出てきている」と述べた。一方、日本政府は米国が強硬的な市場開放を要求し続けることから、今会合で関税協議が進展しない場合に交渉を離脱する案の検討にも着手した。
甘利氏はこの日のTPP閣僚会合で、国有企業の議論に参加。日本や米国は国有企業が民間企業の海外進出を妨げているとしてマレーシア、ベトナムに優遇措置撤廃などの改革を求めているが「(態度を)留保している国に配慮しつつ方向性を出してきた」と述べ、歩み寄りを示唆した。ただ参加12カ国が25日までの会合で目指す「大筋合意」について「12カ国の閣僚が一堂に会する必要がなくなるのが大筋合意なら、そこまではみえていない」と交渉の遅れに懸念を示した。
23日は協議が平行線を続ける米通商代表部(USTR)のフロマン代表との個別会談はなかった。米側は関税撤廃の姿勢を変えておらず、日本国内では自民党や農業団体の米側に対する不信感が強まっている。
安倍晋三政権は自民党や国会の決議をほごにして、現在の譲歩案以上に農産品の関税を引き下げることが難しい。政府高官は「関税交渉で現在の譲歩案以上に譲れば安倍政権でも耐えられない」と指摘した。