3つ目の「増税しないと国債が暴落する」。これは財務官僚による執拗な「日本国債暴落」説だ。日米を比較すれば、それが詐術だとすぐわかる。両国政府の純債務を見ると、2011年度末で日本は473兆円、GDP比97%、米国は14兆8000億ドルで同95%だ。日米の債務水準はほぼ同じで、日本が飛び抜けて高いわけではない。しかも日本国債の90%以上は日本国内の貯蓄で賄われており、日銀が買い増しするゆとりが十分ある。米国の場合、国債の3分の1は外国勢に依存しており、投げ売られるリスクは日本よりはるかに高い。FRB(連邦準備制度理事会)による国債買い入れも限界に来ている。外国の投資家はそれをよく知っているので、米国債よりも日本国債をはるかに安全資産だとみている。
安倍首相はわかっておられるだろうが、このような官僚の詐術を排したうえで消費税増税を最終決定してほしい。(ネットマネー)
田村 秀男●たむら・ひでお 産経新聞社特別記者・編集委員兼論説委員。日本経済新聞ワシントン特派員、米アジア財団上級フェロー、日経香港支局長、編集委員を経て現職。『人民元・ドル・円』(岩波新書)、『円の未来』(光文社)、『財務省「オオカミ少年論」』(産経新聞出版)、『アベノミクスを殺す消費増税』(飛鳥新社)など著書多数。今、政府・日銀の金融経済政策運営に対して数多くの有益な提言を行なう気鋭のジャーナリストとして注目を集めている。