車めぐり日米貿易摩擦が再燃 トランプ政策が「米自動車産業を衰退させるきっかけに」

 
GMの本社ビル=米ミシガン州デトロイト(撮影・大竹信生)

 トランプ米大統領が日本の自動車市場を貿易不均衡是正の標的にする考えを明言し、日米の貿易摩擦が再燃した。今後は2国間の通商交渉を通じて圧力をかけ、米国製品の輸出枠などを求めてくる可能性がある。ただ、過去の貿易摩擦では結果的に米製造業の競争力を低下させた歴史があり、トランプ氏の保護主義的な政策がさらなる没落を招く恐れも指摘される。

 日本は米国で多くの自動車を販売しているのに、米国車を公平に輸入していない-。トランプ氏の発言はかつて貿易摩擦で米国が主張したものとほぼ同じだ。

 米国の貿易赤字は1980年代のレーガン政権下で拡大。大量解雇や工場閉鎖など影響が広がったことで当時最大の赤字相手国だった日本に非難が集中した。

 特に激しかった自動車交渉では、米通商法301条(スーパー301条)に基づき日本製高級車に100%の関税をかけると表明するなど、あの手この手で日本側を“恫喝(どうかつ)”。結果、日本は対米輸出の自主規制や米国製自動車部品の輸入拡大などを余儀なくされた。

 今回、トランプ氏が名指しで批判したのは、貿易赤字の約半分を占める最大の赤字相手国・中国と、いずれも1割弱を担う3位日本と4位メキシコだ。

 まず、生産拠点を海外に移す企業に高い税金を課す「国境税」を制裁措置に掲げ、圧力をかける。さらに、米国の主張が通らない環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)のような多国間の枠組みは避け、2国間交渉を通じ「米国製品を買え」と突き付ける。

 仮に過去の貿易摩擦と同様の経過をたどった場合、相手国に対し米国製品の輸入義務付けや輸出規制、米国内の生産拡大などを要求する可能性がある。

 一方、リーマン・ショック後に米自動車大手3社「ビッグ3」のゼネラル・モーターズ(GM)やクライスラーが経営破綻したのは、貿易摩擦で保護されたことで非効率な経営体質を温存したことが一因とされる。

 第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは、トランプ氏の政策が「米国の自動車産業をさらに衰退させるきっかけになる」との見通しを示す。(田辺裕晶)

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