「流通業界のゴッドマザー」の逮捕の背後には何が?

ロッテ創業者長女逮捕
ソウル中央地裁に出頭したロッテグループ創業者の長女でロッテ奨学財団理事長の辛英子容疑者=6日、ソウル(共同)

 【ソウル=藤本欣也】経営権をめぐり内紛が続いていたロッテグループの創業者一族から、ついに逮捕者が出た。「韓国流通業界のゴッドマザー」とも呼ばれた辛英子容疑者の逮捕に踏み切った韓国検察の狙いは何か。さまざまな臆測を呼んでいる。

 英子容疑者は6日、逮捕状発付の可否に関する裁判所の審査で、自らを逮捕しないよう号泣しながら訴えたという。逮捕される際にも「私がなぜ逮捕されなければならないのか」と強く抗議したとされる。

 報道によると、韓国ロッテグループは英子容疑者の逮捕について、「個人の問題であり、グループとは関係がない」との立場だ。検察側も、グループ本体の裏金疑惑とは別件扱いで捜査してきた。

 しかし、英子容疑者は(1)創業者、重光武雄氏から寵愛され、武雄氏の心を動かせる唯一の人物といわれる(2)グループの中心企業の経営に関与してきた-などの理由から検察は今後、グループの組織的な裏金づくりについても英子容疑者を取り調べる見通しだ。

 聯合ニュースによると、財界関係者は「検察は標的とする人物の犯罪行為の証拠を確保するため、その人物をよく知る“容疑者”との間で、求刑の軽減などを条件に取引をするケースが多い」と指摘、英子容疑者は「その最適の人物」との見方を示している。

 英子容疑者は武雄氏の先妻(故人)を母親にもち、2008年から12年までロッテショッピングの社長に就任、ロッテグループの流通事業を牽引してきた。

 一方、韓国ロッテグループの重光昭夫会長と経営権をめぐり係争中の宏之氏は7日、「現在のロッテグループの経営体制に深刻な憂慮を表明する」などとする声明を発表、今回の逮捕を反撃材料にする考えだ。