シリアを含むアラブ諸国には、19世紀のカフカス(英語名コーカサス)戦争で敗れたときに、ロシアの支配を潔しとせずに当時のオスマン帝国領に亡命したチェチェン人、チェルケス人などの北カフカス系住民が100万人以上いる。この人たちは現在もロシアの親族と良好な関係を維持している。中東に在住するチェチェン人には、アルカーイダや「イスラム国」の影響を受けた過激派もいる。このような過激派は、北カフカスに第2の「イスラム国」を建設する目的でロシアへの潜入を試みている。「イスラム国」がロシアの国家統合を揺るがす危険性があることをプーチン政権は冷徹に認識している。それだから、シリアではアサド政権に対する政治面のみならず、軍事、インテリジェンスの面でも協力を強化している。
「イスラム国」は、イランの国教であるイスラム教シーア派12イマーム派を殲滅(せんめつ)の対象としている。従って、イランもアサド政権に対するてこ入れを強めて、「イスラム国」の弱体化を図っている。