このコンピレーションでは、彼の主眼は“踊る”ということよりも“聴く”ことに置かれている。それは、彼がクラブDJであると同時にラジオDJであるということが作用しているのだろう。クラブDJイコール踊らせ屋という誤解が世の中に広く流布しているが、ジャイルスのラジオ番組やコンピレーションを聴くとDJは音楽のキュレーターであるということを再認識させられる。そのテイストメーカーとしての能力は高く評価され、現在ブルーノートと契約しているホセ・ジェイムズの才能を見いだしたり、同じブルーノートに所属し、グラミー賞を受賞したグレゴリー・ポーターをいち早く自分のイベントで紹介するなど逸話には事欠かない。
ボーダーレスな感覚で
ノンストップミックスでダンスフロアの雰囲気を再現するのではなく、さまざまな音楽ジャンルの中から、ジャズに影響を受けた音楽を抜粋し、ボーダーレスな感覚でまとめあげていく手腕は圧巻。ヒップホップ、R&B、エレクトロニカ、テクノ、ロック、フォークまでを網羅しながら、統一感を出すのは至難の業だが、彼の好奇心と自由な感性はむしろごった煮の面白さを提案している。