絶好調のスタートだが、「今季は勝てないだろうと思っていた」と明かす。冬季五輪史上最多の7大会連続で出場した2月のソチ大会の個人ラージヒルで銀、団体でも銅メダルを獲得。日本選手最年長のメダリストとなり、一躍人気者に。オフはテレビ出演やイベント出席に引っ張りだこで、十分な練習ができなかった。周囲の期待から「横綱のような負けられない雰囲気」にプレッシャーも感じていた。
だが、この日は起床時に日課としている体脂肪を確認するために腹を触った瞬間、「きた。完璧だ」と思った。先週まで理想より1.5キロほど重かった体重を59.3キロまで絞り、軽くなった体を高い技術で風に乗せ、飛距離を伸ばした。
「ノリ、スーパー!!」
現地でも絶大な人気を誇り、同点優勝が決まると「ノリ、スーパー」と大歓声を受けた。同点優勝のアマンも「自分には無理。こんな記録は誰も破れない」と脱帽。敬意を表し記念撮影でも記者会見でも当然のように中央を譲った。
「同じ条件なら俺が他の選手より上にいると自信が出た」と、今季も年齢の壁を越え若手と互角以上に戦える手応えをつかんだ葛西。開幕前の目標は「総合30位以内」だったが、「ここまできたなら総合優勝を狙っていきたい」と、昨季の5位からさらなる飛躍を誓った。