イスラエル東部、荒涼としたユダヤ砂漠の真ん中で、野外オペラ・フェスティバルが開催された。紀元前1世紀に築かれたマサダ(要塞)の麓が会場となる。4回目と歴史は浅いが、オンリーワンのオペラとして国内外から注目を集めているという。
今年の演目はジュゼッペ・ヴェルディの代表作「La Traviata(椿姫)」。夜9時半開演。開催した6月は日本よりもずっと日が長い上に、地表で最も低い海抜マイナス418メートルの死海と隣り合わせ。夜の砂漠であっても日本の夏並みの蒸し暑さだ。
観客は、椅子の上に用意されていた扇子をせわしなくあおぎながら、これから始まる椿姫を楽しみにしているのが、笑顔からうかがえる。ようやく空が漆黒に包まれる頃、ぼんやりと浮かび上がるマサダをバックに舞台は幕を開けた。
≪離散が生んだ踊り 舞台と融合≫
荒野の砂漠にオーケストラが奏でる「乾杯の歌」が響く。華やかに、それでいて巧みな心理描写を精緻するように物語が進んでいく。