岡本は、最初は若き日のナワルの恋人役として登場し、計6役を演じ分ける。「それぞれのシチュエーションで集中しているので、混乱することはない」と笑う。「中東の状況を、日本の自分の生活に置き換えると恐ろしい。常に死が身近にあり、仲間同士の争いが起き、家族が巻き添えを食って死ぬということが普通に起きている」
原作者ムワワドと同年代でもある岡本。「彼がこの作品を書いた過程を聞いて、失礼のないようにやらなければと感じた」と身を引き締める。「言葉が分からなくても伝わるものはあり、涙が流れることもある。同じことはこの作品でも言える。日本人が中東の話をやる意味はあり、年代も人種も関係なく何かを伝えることはできるはず」と、舞台に思いをはせる。
「対岸の火事」ではなく
連日のように報道される中東紛争、パレスチナの一画であるガザ地区では一般市民に対する無差別攻撃が展開され、多くの子供たちも犠牲になっている。その痛ましさを「対岸の火事」と捉えないでほしい-との思いは2人に共通する。