台湾映画の第一人者、蔡明亮(ツァイ・ミンリャン)監督(56)が、台北郊外の廃虚でホームレス同然の生活を続けている父親と幼い息子と娘の日常を通して、台湾社会の暗部を浮き彫りにした。原題は中国語でピクニックを意味する「郊遊」(邦題『郊遊〈ピクニック〉』)。行き当たりばったりで、何が起こるかも分からない、不安定な暮らしを逆手に取って、むしろ父親と子供たちがドキドキの日々を楽しんでいる様を表現したという。
主人公の父親、小康(シャオカン)には長年コンビを組んできた名優、李康生(リー・カンション)(45)を据えた。小康は高速道路の高架下で不動産広告の看板を持って立ち続けることで日銭を稼ぎ、子供たちは通学せずスーパーの試食コーナーを徘徊(はいかい)して空腹を満たす日々だ。