首相が歴訪した中南米以外の国際情勢をみれば、日本の立ち位置は微妙な場所にある。ウクライナ情勢をめぐるロシアへの追加制裁は北方領土問題の行方も考慮しなければならない。核・ミサイル開発を行う北朝鮮との拉致問題の交渉は米国などの理解を得ながら慎重に進める必要がある。
こうした際に国際社会で日本の力強い応援団となり得るのが中南米諸国だ。これらの国々は日本固有の問題に直接の利害関係があまりなく、協力を得やすい。今回の歴訪でも首相が各国首脳に拉致問題をめぐる日朝協議について説明し、支持を得ている。
歴史的に中南米諸国は日本への理解者でもある。明治時代にいち早く日本と平等条約を結んだのも、戦後に日本の国連加盟にそろって賛成したのも中南米諸国だった。今回の歴訪ではカリブ諸国が日本の捕鯨に賛意を示している。
発言力アップ期待
約30カ国の中南米諸国は国連でも一定の勢力を誇る。常任理事国拡大をめぐっては中南米諸国の中にもメキシコなど慎重な国があるが、他の多くの分野では日本の発言力アップの強い味方になってくれることが期待される。