キューバに1カ月滞在したあとに訪れるメキシコは、小さな衝撃の連続だった。
キューバでは子供はみんな元気に学校に通っていた。そんな島から、粗末で破れた服を着た小学校低学年くらいの少年が、大人の靴を磨いている土地へ。
ここでは貧しい子供たちは、当然のごとく働いていた。公共の場所に張ってある信じられないほどの人数の「行方不明者」の写真には、さっき道ばたですれ違ったような、ごく一般の女性や子供の顔も並ぶ。メキシコ人の友人は「外見では判断できないけど、何らかの形で麻薬カルテルに関わっている人が多い」と教えてくれた。新聞で、麻薬に関連した事件の残虐な写真を見るたびに、メキシコの現実を思い知らされた。
そして、先住民と、白人の子孫、そして混血の人々が、法律上は同じ権利を持つ国民であるにもかかわらず、人々の意識を支配している「人種差別」。メキシコ全土にはびこるゆがんだ常識に、違和感を覚えずにはいられなかった。
だから、メキシコ人は不満だらけだ。差別、貧困、政治への不信。話し始めるときりがない。そして、彼らの渦巻く不満が爆発したデモに、首都のメキシコ市で遭遇した。