小説「百年の孤独」「族長の秋」などで知られ、1982年にノーベル文学賞を受賞した南米コロンビアの作家、ガブリエル・ガルシア・マルケス氏が4月17日、メキシコ市の自宅で死去した。87歳だった。今月(4月)に入り、肺感染症などで一時入院した後、退院し自宅に戻っていた。現実と幻想を交錯させる「魔術的リアリズム」の名手と呼ばれ、コロンビアの辺境に生まれながら、世界中の人々の心に残る魅惑的な作品を残し、ラテンアメリカ文学の存在感を示した。現在の日本文学を担う作家たちにも大きな影響を与えた。
魔術的リアリズム
1927年、カリブ海沿岸にある小さな町アラカタカで生まれた。幼少期に祖父母の元に預けられ、退役軍人で厳格な祖父と、迷信や噂話が好きな祖母らに囲まれて育った。高校時代に新聞に短編小説を投稿。大学を中退し、新聞記者を経て、50年代から本格的に創作活動を始めた。
パリなどで暮らし、貧乏生活が続いたが、青年期から構想を温め1年半かけて執筆した「百年の孤独」(67年)が世界で数千万部を売る大ベストセラーに。架空の町マコンドを舞台にしたブエンディア家の年代記に、中南米のさまざまな事象、歴史を投影させた。その後もグロテスクな独裁者を描いた「族長の秋」(75年)やノンフィクション的手法を取り入れた「予告された殺人の記録」(81年)などを世に出す。