約1年半の旅行を終え、久しぶりに日本に戻ると、外国語で書かれた1通の手紙が届いていた。思い当たるふしがない。差出人の住所を見て、散らばっていた記憶がつながった。キューバ東部の都市、オルギンのアイスクリーム屋で、たまたま相席となった夫婦だ。
私たちは意気投合し、店を出た後近くの公園に行き、私は旅行の話をして、彼らは日常生活からキューバ危機までさまざまな興味深い話題で盛り上がった。文通が趣味だと言う奥さんのラケルは、日本の住所と帰国時期を訪ね、一緒に写真を撮り、別れた。時間にして、わずか30分ほどだったろうか。オルギンを発つ前日に出会ったので、その後会うこともなかった。
旅行中は各国で多くの人と出会った。たいていは、その後Facebookで彼らの近況をチェックする中、遠いキューバから海を渡って届いた彼女の手紙は、おしゃべりした広場の様子や、薄暗くなった夕暮れの公園を照らしていたオレンジ色の街灯、みんなで大笑いした光景などあの時以来「更新」されていない記憶をよみがえらせ、懐かしさを感じた。