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何も語らず逝った父への思い重ね 「八月の青い蝶」 周防柳さん (1/3ページ)

2014.3.10 18:35

小説すばる新人賞を受賞した周防柳(すおう・やなぎ)さん。父親の被爆体験は長年書きたいと思っていたテーマだった=東京都千代田区(塩塚夢撮影)

小説すばる新人賞を受賞した周防柳(すおう・やなぎ)さん。父親の被爆体験は長年書きたいと思っていたテーマだった=東京都千代田区(塩塚夢撮影)【拡大】

  • 「八月の青い蝶」(周防柳著/集英社、1470円、提供写真)

 【本の話をしよう】

 第26回小説すばる新人賞を受賞した周防柳(すおう・やなぎ)さん(49)の『八月の青い蝶』が刊行された。1945年と現代の8月を交錯させながら、原爆によって断ち切られた恋物語を描いた長編だ。

 洞窟をさぐるような感じ

 物語は2010年から始まる。急性骨髄性白血病で自宅療養することになった亮輔は、中学生のときに広島市内で被爆していた。妻と娘は、亮輔が大事にしている仏壇で、古びた標本箱を発見する。そこには、小さな青い蝶がピンで止められていた。誰にも語られることがなかった亮輔の恋とは-。

 亮輔のモデルは、実際に広島市内で被爆した自身の父親。その被爆体験は「いつか書きたいとずっと思っていたテーマ」だという。10年以上温めていたが、父親の死に背中を押され、筆を執った。「何も語らないまま父は死に、永遠に封印されてしまった。でも、逆に今こそ書かねば、とも。スタートラインで立ち止まったままだったところに、やっとピストルが鳴った、という感じですね」

凍結された命の象徴

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