それは、高橋のように直接現地と関わるかたちもあれば、遠くにいながら想い続けるというかたちもあるはずだ。自分が日々考え、興味を持っていることと、震災のある側面を近づけてみる。そうすると、出自のわからぬ後ろめたさや記憶の後退とはまったく別の、震災と自分の自然な距離感と、それについて考え続けるための持久力が備わる気がする。僕たちは、まだまだこれからも、考え続けなければならないのだ。(ブックディレクター 幅允孝/SANKEI EXPRESS)
■はば・よしたか BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。人と本がもうすこしうまく出会えるよう、さまざまな場所で本の提案をしている。
≪(1)「津波、写真、それから」(高橋宗正著/赤々舎、2730円)≫
3.11の津波で流されてしまった家族写真を、持ち主に返そうとした活動を1冊にまとめる。写真家の高橋宗正による写真と文章は、写真という存在が、人の生活の実際的な何に作用してきたのかをあぶり出す。
≪(2)「スカイフィッシュ」(高橋宗正著/赤々舎、2940円)≫
高橋宗正が写真という表現方法によって何を伝えたいのかを知るには、この1冊が相応しいだろう。物語性を拒み、何げなく撮ったばらばらの写真をずっと眺めていると、あら不思議。通底する何かが見えてくる。