【アートクルーズ】
明治から大正にかけて活躍した異彩の画家、岸田劉生(1891~1929年)の画業を、父親の吟香(ぎんこう、1833~1905年)、娘の麗子(1914~62年)の生涯とともに解き明かそうという企画展「岸田吟香・劉生・麗子-知られざる精神の系譜」が、世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園)で開かれている。親子3代を一緒に取り上げる企画展は初めての試みという。
父は「明治の傑物」
ほとんどの読者は知らないと思う吟香、麗子の紹介から始めたい。吟香は「明治の傑物」と呼ばれた人物。岡山県から上京し、湯屋の三助など下男時代を経て、国内初の民間新聞を発行。従軍記者でも活躍し、和英辞書の編集や薬販売でも成功を収める。ひげと肥満体がトレードマークで、目薬「精●(=金へんに奇)水(せいきすい)」では、広告チラシに薬瓶に扮した格好で登場、ユーモアを交えてアピールしている。
4歳から16歳まで劉生のモデルを務めた麗子は独学で画家となり、劉生と交流のあった白樺派の武者小路実篤(1885~1976年)に師事して、舞台人としても活躍。小説や戯曲も書いた。