【アートクルーズ】
小野佐世男(おの・させお、1905~54年)という画家・マンガ家を、ご存じだろうか?
30年代から50年代にかけ、風刺マンガ雑誌や新聞小説の挿絵に絵筆を振るい、映画やラジオに出演するなど、さまざまなメディアで活躍したにもかかわらず、今ではほとんど忘れ去られた天才作家である。その天才の仕事に光をあてる「小野佐世男展 ~モダンガール・南方美人・自転車娘~」が2月11日まで、京都国際マンガミュージアムで催されている。
50年代の主たる娯楽雑誌をひもとけば、必ずと言っていいほどその名が見られるのに、小野佐世男の名が忘れられてしまったのはなぜなのか。これはマンガ界のミステリーでもある。
大人マンガ第一人者
理由のひとつは、佐世男が活躍した「大人マンガ」の世界がほとんど消滅してしまったからだろう。現在、マンガといえば、連続するコマでストーリーが語られる、どちらかといえば子供向けの娯楽と考えられている。