必ずどこかに響く
最後にできあがったのは、見たことのないそれぞれ個性的な3つの本棚だった。図書館のどこかで眠っていた本たちが、学生たちから伝搬した熱を帯びて、いつもより得意げな顔をしながら小さなライブラリー in ライブラリーに並んでいる。
世の多くの図書館を眺めてみると、新刊予算が少ないとか、ベストセラーばかりに貸し出しが偏重しているという話題をよく聞く。けれど、リチャード・バックが『イリュージョン』のなかでこう書いていたことを思い出すべきだ。「ただ本をひらけばいい。そこが、きみにとっていちばん必要な箇所なんだよ」という言葉。読み手がオープンな気持ちになって本に向かいさえすれば、その本は必ず読者のどこかの部分に響く。そう、つまらない本なんていうのは、元来世界には存在しないのである。(ブックディレクター 幅允孝(はば・よしたか)/SANKEI EXPRESS (動画))
■はば・よしたか BACH(バッハ)代表。ブックディレクター。人と本がもうすこしうまく出会えるよう、さまざまな場所で本の提案をしている。