北極圏にあるアイスランドは、200を超える火山に、国土の約10%が氷で覆われる。「火と氷の島」と呼ばれ、その共存しがたい組み合わせが、アイスランドの大自然をより魅力的に彩る。
観光客でにぎわう夏を避け、紅葉シーズンも終わりを迎えようとしている10月中旬に首都、レイキャビクに降り立つと、ややひんやりとした風が出迎えてくれた。
車で東エリアへ。目指すはヨーロッパ最大の氷河「バトナヨークトル(バトナ氷河)」だ。アイスランドでも人気の滝トップ10に入る「セリャランフォス」や「スコガフォス」、珍しい黒い砂浜などを楽しみながら、どこまでも続く地平線に向かって車で走る。
灰色がかった厚い雲を恨めしそうに見ていると、「秋から冬の定番だ」と現地ドライバーが教えてくれた。人口の半分が首都圏に住んでおり、時折、小さな集落を見る以外、行き交う車もほとんどない。
バトナ氷河はアイスランド国土の約8%を占め、麓に広がる氷河湖ヨークルサルロンには崩れ落ちた氷河が氷山となって浮かんでいる。氷河湖は海につながり、流された氷山が波に洗われ、大小の氷塊が砂浜に打ち寄せる。氷が生きものと感じられる不思議な場所だ。