どこまでも坑道が続く、狭く暗い地底世界の集落に暮らすお姫様パテマ(声・藤井ゆきよ)は、世界の先はどうなっているのか興味津々で、楽しみといえば、坑道の探検だった。そんなある日、パテマは集落の掟で立ち入りが禁じられている危険区域に出入りしていると、不測の事態に遭遇、底が見えない穴に落ち、闇の彼方へ落下してしまう。一方、空を忌み嫌う世界アイガ。いつものように空を眺めて過ごす風変わりな少年エイジは、地底から“降ってきた”パテマと出会う。
幅広い人に観賞を
アニメーションに限らず、実写映画でも重力の向きが場所によって変わる設定はまま見かけるが、吉浦監督はパテマを「永遠にサカサマに生きることを運命づけられた存在」と規定して、一緒にいる人物と物の見方や感じ方を分かち合えなくすることで、一線を画した。例えばエイジが何も考えずに地面に立っていたとしても、パテマにすれば足場が底抜けの空なわけだから、気持ちとしては「落ちてしまうのではないか」と怖くて仕方ないといった具合。「2人が相互の立場の違いを次第に理解し、受け入れていく過程をわかりやすく描けば、サカサマの状況は恋愛映画の立派なメタファーとして使えますよね」