しかし、逆風は想像以上だった。与党民主党が推進する金融規制について、サマーズ氏は慎重な点がネックになった。上院民主党でイエレン氏を推す議員が署名活動を展開し支持が3分の1を超えた。さらに過去の女性蔑視発言などへの批判が台頭。大統領はサマーズ氏を弁護したが、先週末に一部メディアが「サマーズ氏を指名する方向で最終調整」と報じ、逆風は一層強まる。人事を承認する上院銀行委員会で民主党議員がサマーズ氏の不支持を相次いで表明。大統領が指名しても承認が危ぶまれる情勢になっていた。
誤算のシリア論議沸騰
サマーズ氏にとっての誤算は、米国を取り巻く政治・外交情勢の変化だった。議長人事が大詰めを迎えたまさにその矢先、シリアの化学兵器の使用疑惑をめぐる米国の軍事介入論議が沸騰した。ホワイトハウスのスタッフは民主党議員の説得にエネルギーを割かれ、サマーズ氏指名に向けた環境整備は遅々として進まなかった。
さらに、迷走する与野党の財政協議もサマーズ氏の前に壁となって立ちはだかった。財政再建へ増税を求める大統領に対し、野党共和党は歳出削減を訴えて対立。今月(9月)中に予算案を可決できなければ、政府機関の一部閉鎖に追い込まれる。オバマ氏はこの上、議会との火種を抱え込むのは得策ではないと判断したようだ。