ゴルフ嫌い習氏 全党員禁止 中国共産党、8800万人対象「倫理規定」
中国共産党は汚職防止策の一環として、約8800万人の全党員を対象に「ゴルフ禁止令」を出した。「暴飲暴食」「不適切な性的関係」などとともにゴルフに興じることを戒めることが、新たに「党員が守らなければならない道徳的倫理規定」に盛られたもので、中国国営新華社通信が22日、伝えた。中国でゴルフが明確に「規律違反」とされたのは初めて。「やりすぎでは…」といった声も聞かれるが、決定にはゴルフ嫌いの習近平国家主席(62)=党総書記=の意向が強く反映されたとみられる。折も折、ゴルフ発祥国の英国訪問中でサッカー好きの習主席は23日、サッカーの街として名高い最後の訪問地、マンチェスターに足を運んだ。
プレーも会員権も厳罰?
新倫理規定は「共産党員は公私を混同せず、公的利益を優先して利他的態度で勤労に励まなければならない」と定めた。ゴルフについては、コースでプレーすることも、会員権を有することも禁じた。違反した場合の罰則は明記されていないが、新華社は「今回の新規定は刑法に優先する」と報じており、違反者には司法管轄外の内部粛清制度で厳罰が下される可能性がある。
習主席は2012年11月に共産党トップの総書記に就任して以来、「ハエもトラもたたく」(大物も小物も容赦しない)として、汚職取り締まりを強化。これまでに周永康・元政治局常務委員(72)ら多数の共産党幹部が失脚している。反汚職運動は、習氏による政治的粛清との批判もあるが、庶民は喝采しており、習氏の大衆レベルでの人気の高さは毛沢東(1893~1976年)に迫る状況になっている。
「グリーンが汚職の温床」
今回、ゴルフが禁止令の対象になったのは、「グリーン上での接待ゴルフが汚職や不正取引を生む温床となっている」というのが党の言い分だが、一方でビジネスマンにとっては、ゴルフ場は大切な情報交換の場所である。にもかかわらず、全党員を対象にした禁止令が出た背景には、習氏の個人的嗜好(しこう)も反映されているとみられる。
文化大革命期に下放(農村での強制労働)された経験を持つ習氏は、ゴルフを「富裕層のスポーツ」として忌避していると伝えられる。13年6月に訪米し、カリフォルニア州でバラク・オバマ大統領(54)と首脳会談に臨んだ際には、米側は無類のゴルフ好きで知られるオバマ氏の意向をくんで、ゴルフ場での会談と両首脳一緒のプレーもセットしようとしたが、習氏がプレーだけは頑として拒絶し、米側を当惑させたとされる。
メダル獲得は血眼
中国で最初にゴルフ場ができたのは1984年のことで、その歴史は長くない。ゴルフ人口は200万足らず、ゴルフ場の数も約600にすぎない。ただ、今回の禁止令で熱が一気にしぼむと見るのは早計だろう。
近年、五輪でメダルハンターの名をほしいままにしている中国は、来年のリオデジャネイロ五輪で、112年ぶりにゴルフが五輪競技として復活するのを受けて、現在、血眼になって選手強化策に熱を上げているからだ。
中国ゴルフ協会は、かつて世界ランキング1位に長く君臨したカリスマゴルファー、グレグ・ノーマン氏(60)=オーストラリア=を中国代表チームの特別コーチに招き、これまで他競技で成果を挙げてきた「エリート選抜→集中強化」の方式で急速にレベルを上げている。
汚職を生むゴルフはダメで、五輪のメダルが取れるゴルフは良し。中国現実主義の具現であろうか。(SANKEI EXPRESS)
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