岡村孝子さんインタビュー 喀血し倒れる父を腕で受け止め看取り 「ありがとう」が別れの言葉に (3/3ページ)

シンガー・ソングライター、岡村孝子さん
シンガー・ソングライター、岡村孝子さん【拡大】

 ◆泣きたい夜を越えて

 秀夫さんの葬儀は岡崎市で営まれた。秀夫さんは若いころ、生まれ故郷の三重県から千代さんとともに岡崎市に移り住み、タクシー会社を興した。社長として常に先頭に立って会社を切り盛りする一方で、昭和42年に岡崎市議に初当選して以来、市議を8期務めた。そのため葬儀は、親類や友人はもちろん会社の関係者や議会関係者ら計400人以上が集まる大規模なものとなった。

 そんな中で、まだショックから立ち直れない岡村さんは「立派な葬儀だな」と思いながらも、どこか現実感が失われていたという。父の棺(ひつぎ)には、思いをしたためた一通の手紙をそっと手向けたそうだ。

 いま東京の自宅では、父の遺影を飾り、毎日お茶を供えているという。「父は生前、お仏壇はなくてもいいから、自分のことを思い出してほしいと言っていたものですから…」

 岡村さんは亡き父へのオマージュとして、「forever」という曲を作った。「あなたは私の心に生き続ける」と、その思いを歌っている。(「終活読本 ソナエ」秋号から)

                  

 【プロフィル】岡村孝子

 おかむら・たかこ シンガー・ソングライター。昭和37年、愛知県岡崎市生まれ。57年デュオ「あみん」でデビュー。「待つわ」がヒット。60年ソロデビュー。「夢をあきらめないで」が大ヒットし、後に中学の音楽教科書にも採用される。アルバムのセールスは総計600万枚を超える。著書に『Happyをさがして』など。