そもそも国の方針からもズレている
「区民アンケートでも南伊豆特養へ入所を希望する人は多い」(区の担当者)というが、以上のような実態が明るみになったとき、果たして入所希望者が現れるのか。匿名を条件に、杉並区内の特養施設へ、「南伊豆特養へのご意見」を募集したところ「遠方ゆえ、頼れる身内がいない方、特に生活保護受給者の入所が多くなるのではと思います」という回答があった。区の担当者に施設への懸念や「ここが姥捨山になる危険はありませんか」と伝えたところ、「最終的には本人の希望によって入所することになるのでその批判(姥捨山)は当たらない」とした。23区の元・高齢者担当課長はこう解説する。
「特養の入所者は、認知症がかなり進んだ高齢者がほとんどです。通常の判断などできませんから、結局『周囲の人間』が『本人の意思』を決定することになる。もし、施設に問題があれば家族は入所を望まないでしょう。結果として、身寄りのない生活保護者が、ケースワーカーの『紹介』という名の事実上のあっせん行為によって、どんどん放り込まれていくことを懸念しています。実際にそういう施設は都内にも実在しています。倫理的なことは横に置いて、特養が不足しているのだから、どこかにつくってしまえば、待機者の数は減ります。行政にとっては都合がいい施設なのでしょう」