ある姥捨山伝説にはこのようなストーリーがある。
息子が老母を背負い、姥捨山に捨てに行こうと歩いていると、後ろでポキ、ポキッという音が聞こえる。息子が老母に何の音なのか尋ねると、
「お前が帰り道に迷わないよう、木の枝を折っているのだよ」
自らは姥捨山に捨てられてしまうことを悟りながらも、最後まで息子を思う老婆。息子はそのことに気づき、涙して親を捨てに行くのをやめた。
南伊豆にできた東京都杉並区の特養で、行政の数合わせによる犠牲者が出ないことを心から祈るばかりである。もしこの事業が成功事例かのような捉えられ方をされ日本全体に広がってしまうのであれば、杉並区民だけではなく、私たち日本人の倫理観が問われることになる。
(新宿区議会議員 伊藤 陽平 プレジデント特別取材班=取材・文 時事通信フォト=写真)(PRESIDENT Online)