実際に、杉並区役所から(南伊豆特養に近い)南伊豆役場までどの程度かかるのか。グーグルとヤフーの経路検索機能を使って計算をしてみた。まずクルマで向かうと、3時間40分から5時間20分(4月22日午前10時に出発)かかるという。では、電車ではどうか。特養の入所者は低所得者が多く、新幹線や特急を使って向かうことは考えにくいが、その場合でも3時間54分かかる。もし、特急料金がかからないように公共交通機関を利用して向かうと5時間26分かかる結果となった。高齢者が日帰りするには絶望的な距離だが、区の担当者は、「家族の立ち寄りの際には、宿泊を想定し、特養内に宿泊できる施設をつくった」という。また家族の立ち寄りは「多くて月1回」の見込みだという。入所者の容態が悪化しても、急遽駆けつけることはほぼ不可能なのは間違いない。では、病院など医療体制は万全なのだろうか。
「かつて近隣に共立湊病院があったのですが閉鎖しました。現時点では特養で何か起きた場合、2次救急(中等症患者)は、隣の市にある下田メディカルセンターへ、3次救急(重症患者)は、車で片道1時間半以上(約70キロ)かかる順天堂大学医学部附属静岡病院まで『天城山を越えて』行く必要があります」(堀部康杉並区議会議員)
介護度が高い入所者は、病院に緊急搬送されるケースが多く、杉並区の特養と比べて全く心許ない状態だ。
なぜ、こんなところに杉並区は特養をつくったのか。平成27年3月27日に杉並区広報課が発表した「全国初の自治体間連携による特別養護老人ホームを南伊豆町に整備します!」との資料内に、「南伊豆は平均気温16℃の温暖な土地」「豊かな自然」「新鮮な魚介類」と宣伝文句が書かれている。それぞれ検証していこう。